茨城大学(池田幸雄学長)は7日、東日本大震災の津波で消失した国登録有形文化財「六角堂」(北茨城市大津町五浦)の再建に向けた会議を五浦観光ホテルにて開催。「1905年(明治38年)ごろに岡倉天心が創建した当時の形での再建」や「遅くても年度内の完成」など、今後の再建に向けた同大学の方針などを示した。また同会議には、(社)県建築士会(柴和伸会長)の五浦六角堂再建支援委員会も参加。専門家の観点からさまざまなアドバイスを送った。今後のスケジュールとしては、再建に向けた資料収集や調査を進めると共に設計を策定、10月にも工事を発注し、年度内の竣工を目指す。
東日本大震災に伴う津波で、茨城大学五浦美術研究所が管理する国有形文化財(長屋門、天心旧邸、六角堂)のうち、六角堂が流失。
同大学は、六角堂の再建に緊急対応する方針を決定するとともに、1905年(明治38年)ごろに天心が創建した当時の形で再建する方針を示した。
この方針に従い、ことし6月には3回(6日・14日・20日)海中捜索を実施。流失した角材や鬼瓦のほか、屋根の上の飾りである擬宝珠(ぎぼし)の破片や台座などを回収した。
また再建には、時代背景を前提とした建築資材の種類、産地、製法、施工技術などの検証が重要であり、専門的能力や知識・技術が必要との考えから、県建築士会に対し協力を要請した。
要請を請けた同会は、内部に五浦「六角堂」再建支援委員会(市毛純一リーダー)を発足。全面的に協力していく姿勢を打ち出した。
今月7日には、茨城大学・県建築士会に地元の北茨城市を加え「六角堂再建合同会議」を開催。これまでの歴史や海底調査の報告のほか、今後の方針やスケジュールなどについて話し合った。
この中で、五浦美術文化研究所の小泉晋弥副所長は、大学の方針として「早ければ年内、遅くても年度内の再建(竣工)」を掲げた。また建設当初の景観を再現するにあたり「岡倉天心の建物への懲りようも復元したい」などと述べた。
県建築士会側からは、当時の地域条件などから推測される瓦や施工技術のほか、1950年代(昭和30年代)、1970年代(昭和50年代)に六角堂を改修した際の設計図と、昨年度に行った現況調査・耐震診断で作成した設計図などを見比べながらのアドバイスなどを行った。
また「8月から9月に掛けて設計業務を行い、10月に工事発注に取り掛かれれば」と、完成目標から逆算したスケジュールを明示。
茨城大学側は、工事発注について「国に準じて入札を執行する」とした。
会議終了後には全員で現地へ赴き、六角堂のあった土台部分や海から改修した瓦や擬宝珠などを確認した。
【写真=①